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「……次は、勝手に消えないでください。呼ばれるまで位置が特定できませんでしたよ」
心吾が、うつ伏せのまま文句を言う。
「しかも、亜空間の中は動いている洗濯機の中に手を入れたみたいでしたよ……」
俺は、痣だらけになってしまった心吾の腕に、湿布を貼ってみた。
「伊万里に頼んで、対応方法を教えるように頼んでおく」
亜空間に負けたら、消えて消滅してしまうのだ。
「大和様は教えてくれないのですか?」
「俺は確かに亜空間の教官だけど、それはゲートキーパーだからであって、亜空間使いとしては下手なのよ。だから、銃器と操縦は教える。俺の分野は、本来はそっちだからね」
心吾は、顔を上げて俺の表情を確認していた。
「分かりました。銃器、教えてください。それと、俺、操縦免許は持っていますから」
心吾が、免許を出してきた。二等航海士で、A級操縦士。なかなかの腕前になる。
「S級操縦士になっておいて。A級ではソニアの操縦は難しいからさ」
「……分かりました」
ついでに、鬼城もA級からS級になって欲しいものだ。しかし、心吾は戦闘能力では、やや劣る。本来ならば、心吾が劣っているのではない。この星では、特殊能力者が普通になっているので、普通の人間では劣ってみえてしまうのだ。
でも、鬼城は宇宙船の操縦には弱い。その面では心吾は優れているかもしれない。
心吾が、S級操縦士になったのならば、S級の申請をかけてもいい。
「響紀。雪家の状況を教えて」
三週間も離れていたのは、辛い。
「そうですね。でも、まず、鬼同丸へ帰りましょう。悲観してしまった、百武も大変でしたよ……」
百武は、五羅に続いて、頭領代行の俺までも又亜空間に飲まれてしまったと、毎日、鬼同丸の大広間に花を供えていたそうだ。
「何故、花?死んでいないだろう」
「花に話しかけていましたよ。他に、日々、寺社にも行っていましてね。見ていても可哀想でした。そのうち、出家するのではないかと、心配もしました」
あんまり百武の嘆きが激しかったので、他のメンバーはむしろ冷静になっていたという。
「きちんと仕事をしていようと、皆、必死でしたよ」
鬼同丸を潰してはならぬと、皆が一丸になって仕事をしていたらしい。
「そんなに仕事を真面目にしていたのならば……俺は、戻ってこないほうが、良かったかな?」
「何を言っていますか。鬼同丸も頭領あっての組ですからね」
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