第1章

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「今日からプログラムを組み直します」 「それから、火威さんを連れ戻している。大怪我だった」 「えええええ、火威ですか」  百武と火威は、同期であるという。犬と猿の仲と言われてもいたが、案外、気が合っているようにも見えた。 「火威に……あちらの事情を聞いてみましょう」  百武は、いつもの百武に戻った。  鬼同丸で鍋を食べていると、帰ってきたという実感が沸く。でも、引き受けた仕事も気になる。 「響紀。雪家の状況を教えて欲しい」  響紀は、さりげなく横に座り、そっと五羅の指輪を確認してため息をついた。 「当麻を向かわせています。雪家は、長く続けた同族での婚姻により、免疫が偏っている状況です。このままでは、残った人員も他の病原菌で危険です」  同族婚は、やはり危険であったのだろう。雪家でも、外に嫁いだ者もいたので、再建して欲しい。 「伊礼樺は?」 「安定しています。火の屋の海の状況も安定しています」  雪家の他に気になっていた、火の屋の伊礼樺は、安定したらしい。これで、雪家に集中できる。 「銀狐に雪路(ゆきじ)がいまして、雪家の出身ですが、こっちは普通に生活してきたので、免疫を持っています。当麻が、雪路の免疫を使用し、徐々に免疫をあげるように、慣らしています」  観測所のセキュリティも、解除できていないらしい。 「準備が整い次第、俺がソニアで行く」 「はい。明日には出発できますよ」  やはり、響紀、いつでも出発できるようにしていた。 「でも、今は、鍋を食べましょう」  鳥の水炊き。庭の鶏が、又、少なくなったような気がする。 「響紀。五羅は元気そうだったよ」  明日操縦するので、酒は控えてみた。響紀は、日本酒を飲んでいる。俺が、響紀の酒をじっと見ていると、響紀は慌てて飲み干した。 「大和は、酒は水のように飲みますからね。でも、今日は控えてください」  酒はかなり好きなのだが、何故か皆、俺が飲むのを嫌がる。 「鬼同衆が全員揃った姿を見たよ。ちなみに俺の事は纐纈さんが助けてくれた。出た場所が孝太郎の前だったからね」  響紀は、胡坐をかいて、じっと俺の話を聞いていた。 「今度は一緒に戦いましょう」  五羅が亜空間から出たら、一緒に戦う。俺が頷くと、響紀が仄かに笑った。 「今度こそ、死ぬときは一緒としましょう」  本当の仲間になって、一緒に戦いたい。五羅に、俺だけ逃がそうなんて思って欲しくない。 「そうだよな」
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