第1章

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 五羅の見送りといい、火威の怪我はそんなに酷いのだろうか。俺が、火威の怪我に触れてみると、そこには傷は無かった。  傷はないのに、包帯には血が滲む。これは、亜空間に傷があるのか?それとも、時間軸にズレがあるのか? 「難しく考えるな。時間の止まった場所で、俺は殺されたのだ。でも時間が動かなかったので、死んだまま生きていた」  余計に難しい。 「つまりは、今いる俺は死んでいる。僅かに時間が流れれば、即死する。ここに居るけど、俺は、まだ止まった時間にいる」  五羅も仲間も、鬼同丸に火威を帰らせようとした。 「五羅は、鬼城で仲間に見守られて眠れと言った。でも、鬼城ではない。鬼同衆のいる場所が、俺の眠る場所。五羅が去れというのならば、大和の元で眠る」  治療はできないということなのか。でも、もしかしたら、当麻ならば、桜川ならば治療も可能なのかもしれない。 「出発します。火威さん、当麻に診て貰ってください」  ソニアが動き出すと、火威が苦しんで転げまわっていた。  火威に、シートベルトをしてもらっておけばよかった。火威は、転がってぶつけたのか、腹ではなく頭を押さえて唸っていた。多分、頭を激突させたのだろう。  操縦を自動に切り替えると、そっと、亜空間経由で桜川に連絡を取ってみる。 「診たよ。火威は、腹を抱えているけどね、本当は、頭をふっ飛ばされている」  火威は、頭を抱えて唸る姿が正しいのか。 「どうやっているのかな。ふっとばされるほんの僅かな手前の瞬間で、時間を止めている。本当に僅かで、あれこれ激痛だろうね」  それを、どうにかして欲しいのだけれど、桜川は冷静に観察していた。 「ナノマシンも、投入しても、ふっ飛ばされて消えるだろうしね。亜空間を孝太郎から奪ったとしても、この亜空間は火威のものだしね」  蘇りも、頭が無くては無理であった。 「だから、五羅も火威を帰したのだろうね。打つ手がない」  でも、今、こうして目の前にいる人物が、殺されると分かっていて何もしないなど、できるものではない。 「師匠……」 「大和に頼られると、弱いよね。残る策は、今ある細胞からクローンを作成しコピーしておくか、かな」  それは、似ているが、同一人物と言うのだろうか。  五羅だったら、本人が一番分かっているので、好きな場所で眠らせてやれ、だろう。
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