第1章

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「大和、消えたと聞いた時は、俺も生きていく希望が消えそうであったよ。必ず戻ってくると信じて、仕事を続けた」  時季が背中から抱きしめてくるが、ここで出来ることは何もない。観測所の側面は、仮設の中であっても、凍り付いていた。  壁も窓も、厚い雪の中にある。まず、この雪が一番の障害であった。 「仮宿舎って、ここでは休めないだろ?ソニアで来ているから、そこで一旦全員を集合させよう」  時季が、俺の頬を両手で包むと、キスしようとしていた。 「やめておけ。そいつは、五羅のいい人だぞ」  どこから、声がしたのだろうか。 「火威……さん」  火威が、仮設の扉の前に居た。  火威は、自分の周囲に炎を纏っていて、寒さとは無縁であるのか、防寒着ではなく普通の服で歩いていた。普通と言っても、まるで大工のような服装で、しかも、紺色の半纏に大きく鬼同と白抜きされたものを着ていた。地下足袋?であろうか、それで、この雪山を来たのだろうか。  火威の火に手を当ててみると、かなり熱い。つい焚火のようにあたっていると、火威に舌打ちされた。 「時季、何度も言っていただろう。大和には手を出すなって。五羅は殺すほどの本気で、取り返しに来るからな」  火威は小柄であるが、その態度は大きい。 「俺も、負けません」 「おう、いいね。で、おいしかったかい?シェリエは上玉だからね」  へへへと、火威は下品に笑ってから、観測所の氷を手で確認していた。  雪の下には、氷もある。観測所でなければ、天然の要塞のようであった。爆破はできるが、観測所を壊してはいけないので、厄介であった。 「ここ、雪家の仕事場だよな。雪家は、ほぼ全滅状態か……まず、この雪、全部、亜空間に入れてしまえ。そうしたら、氷は俺がどうにかしてやる。この施設の、電子的なセキュリティは姶良がいるのだろ。解いてもらっておいてくれ。氷を溶かし次第、中に入る」  雪の層が、厚い所で約十メートルある。 「俺が万全なら、雪ごといけるのだけどね。俺、死にそうなんでね、雪はやめとく」  それでも、火威の能力は凄い。やはりSS級というのは、桁違いに能力は高い。 「分かりました。時季、全員をソニアへ移動。役割を分担する」  ついでに、凍ってしまっている中型宇宙船も回収しておこう。積もっている雪で、飛べなくなりそうであった。 「時季、ヘリで帰っていいよ。俺、こっちの宇宙船を動かす」
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