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「鬼同衆を野放しも怖いですよ。本当は伊万里を、鬼同衆入れたいのですけどね……」
伊万里は、既に特S級を申請していた。伊万里が、亜空間使いの教官になれる日も近い。
「伊万里は、教える側にまわりたいそうでね」
俺も、亜空間使いは増えて欲しい。
「では、行ってくる」
百武が目配せすると、奥から龍造寺(りゅうぞうじ)が歩いて出てきた。
「俺も口入屋に見に行くところでしたので、一緒に行きますよ」
鬼若衆の主要メンバーの龍造寺だが、俺は余り話したこともない。龍造寺は、かなり無口な男で、同じく話す事が苦手な俺とだと、会話にならない。
龍造寺と並んで歩き出すと、本当に喋らない。龍造寺は、百武と比べると、後から鬼同丸に加わったメンバーであった。どういう経緯で加わったのかも、俺はよく知らない。
鬼城の江戸のような町並みを抜け、城のような鬼城本部へ入る。百武にバレていたのかもしれないが、俺は鬼城の頭領、一羅に呼び出されていた。
口入屋を無視して、さらに上の階に上る。
最上階付近の和室に通されると、俺は窓を開けて外を見ていた。快晴で、遠くまで町が見える。山に続く程の大きな町だが、木造家屋で二階までしかない。本当に江戸の町並みであった。移動手段も、鬼城の者のせいか徒歩が多い。車は走っていない。
「待たせたな、大和。と、龍造寺か。久し振り」
一羅に、龍造寺は深く頭を下げていた。
「龍造寺は、鬼同丸に行く前は、俺のチームでな。そん時も、無口で、驚いたよ。必要最小限も喋らない。でも、いい腕でな。五羅に付いていくと聞いた時は驚いた。五羅と喋ることがあったのかってね」
一羅は、龍造寺の肩をバンバンと叩いて笑っていた。
「それがな。五羅に聞いたらさ。行く。了解の二言で決まったらしいよ」
それでよく意味が通じたものだ。
でも、龍造寺が一羅の信頼を得ていることは分かった。
一羅は、正面に座ると、係員に飲み物を頼む。俺の分は、ココアをオーダーしていた。俺に聞かずに選んでしまうあたりが、一羅らしい。
「それでだ、大和。頼みたいことがある。雪家(せっか)というのを知っているか?」
雪家は知っている。寒い場所、特に雪相手の仕事を得意とした組であった。そして、雪女と称される程に、女性ばかりの組でもあった。
「雪家が、ほぼ全滅した」
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