第1章

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「鬼同衆を野放しも怖いですよ。本当は伊万里を、鬼同衆入れたいのですけどね……」  伊万里は、既に特S級を申請していた。伊万里が、亜空間使いの教官になれる日も近い。 「伊万里は、教える側にまわりたいそうでね」  俺も、亜空間使いは増えて欲しい。 「では、行ってくる」  百武が目配せすると、奥から龍造寺(りゅうぞうじ)が歩いて出てきた。 「俺も口入屋に見に行くところでしたので、一緒に行きますよ」  鬼若衆の主要メンバーの龍造寺だが、俺は余り話したこともない。龍造寺は、かなり無口な男で、同じく話す事が苦手な俺とだと、会話にならない。  龍造寺と並んで歩き出すと、本当に喋らない。龍造寺は、百武と比べると、後から鬼同丸に加わったメンバーであった。どういう経緯で加わったのかも、俺はよく知らない。  鬼城の江戸のような町並みを抜け、城のような鬼城本部へ入る。百武にバレていたのかもしれないが、俺は鬼城の頭領、一羅に呼び出されていた。  口入屋を無視して、さらに上の階に上る。  最上階付近の和室に通されると、俺は窓を開けて外を見ていた。快晴で、遠くまで町が見える。山に続く程の大きな町だが、木造家屋で二階までしかない。本当に江戸の町並みであった。移動手段も、鬼城の者のせいか徒歩が多い。車は走っていない。 「待たせたな、大和。と、龍造寺か。久し振り」  一羅に、龍造寺は深く頭を下げていた。 「龍造寺は、鬼同丸に行く前は、俺のチームでな。そん時も、無口で、驚いたよ。必要最小限も喋らない。でも、いい腕でな。五羅に付いていくと聞いた時は驚いた。五羅と喋ることがあったのかってね」  一羅は、龍造寺の肩をバンバンと叩いて笑っていた。 「それがな。五羅に聞いたらさ。行く。了解の二言で決まったらしいよ」  それでよく意味が通じたものだ。  でも、龍造寺が一羅の信頼を得ていることは分かった。  一羅は、正面に座ると、係員に飲み物を頼む。俺の分は、ココアをオーダーしていた。俺に聞かずに選んでしまうあたりが、一羅らしい。 「それでだ、大和。頼みたいことがある。雪家(せっか)というのを知っているか?」  雪家は知っている。寒い場所、特に雪相手の仕事を得意とした組であった。そして、雪女と称される程に、女性ばかりの組でもあった。 「雪家が、ほぼ全滅した」
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