第1章

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 纐纈は黒く長いまつ毛に縁どられた、濃い目で、髪も黒い。顔も端正で、黙っていれば良家の出身であるのに、喋ると言葉使いは悪くうるさい。 「……大和。俺達は自分の置かれている立場を分かっているよ。ここは、亜空間で、時間も止まっている」  だからと、纐纈が言いかけると、孝太郎が公園の入口に現れていた。 「逃げる」  孝太郎は、大声で笑いながら、暗闇で公園を消しながら歩く。 「消えろ!消えろ!」  孝太郎の声が追いかけてくる。 「大和!全力で走れ」  どこまで走ったのか分からないが、古い巨大な建物の中を走っていた。この建物は、古い宇宙ステーションのような感じであった。今は、地面でも宇宙船は飛ぶが、昔は巨大な設備で宇宙船を飛ばしていた。  制御室や、観覧席、医務室、研究室、昔の言葉なので片言でしか読めないが、各種の設備が整っていた。  縦横無尽に走る通路、中央と側面に吹き抜けがあり、空中にも通路が走っていた。 「大和、こっち」  纐纈に呼ばれて、中央の部屋に入った。 「孝太郎も、巨大な建造物は消すのに時間がかかるからさ」  俺は、建物の全体像を計算する。 「……そうでもない」  この規模ならば、俺なら瞬間で消せる。 「……はああ、そうだったな。大和はゲートキーパーだったねえ」 「消せない物を出せばいいのか?」  孝太郎に消されまくっていたのならば、皆の亜空間の物も少なくなっているだろう。 「まあね」 「待った。大和、久し振り」  咄嗟の出現に、俺は言葉も出なかった。  跳ねまくったとがった髪、黒に派手な刺繍の半纏が、部屋の奥に浮かび上がってきた。  ややつり目で、でも優しく笑う。 「五羅……様」  五羅は近寄ると、俺の手を取り指輪を確認した。 「ああ、大和の指は細いな。少し調整が必要だったか。で、俺のプロポーズは受けてくれるのか?」  プロポーズ?最後の別れのような言葉しか、聞いていない気がする。  真剣に悩んでいると、五羅が笑っていた。 「大和が、躊躇もなく、何をしてもいいと言ったからな。経験を積んだよな……」  やはり、幻ではなかったのか。 「……時季と響紀のどちらだ?」  俺が答えられずに、固まっていると、五羅が察知していた。 「両方か。二人とも、死ぬ覚悟は出来ているわけだよな……」  五羅の目が燃えるように輝く。
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