彼と彼女の転換点

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陽射しも柔らかく、春が始まりを告げ始めた三月のとある日。 今年から晴れて新大学一年生になる田原耕一は、親元を離れこの街で一人暮らしを始めることとなった。 その記念すべき初日、つまりは今日。 一人で生活するにあたって必要なものーー荷造りの際に入れ忘れたものや、今日の食料などを手に入れるべく、耕一は街へと繰り出していた。 付近の探索も兼ねて二、三時間ほど歩き回り、やたらとおみくじを勧めてくる神社でおみくじを引いたり、道中怪しげな勧誘にあったりもしたが、 なかなか自分好みのマグカップや、少し高めの箸、今晩の食糧などを手に入れることができた。 そして新生活に胸を踊らせ、ほくほくとした気分で歩く夕焼けに照らされた帰り道。 「ーーーーぅぁぁぁぁぁぁあああ!!!」 「……ん?」 どこかから聞こえてきた絶叫に耕一は立ち止まった。 何だ何だと周囲を見回すが、辺りに人影は無い。 しかしどうにも悲鳴の主は近づいてきているようで、次第にその声は大きくなっていく。 どういうことかと首を傾げた彼。 不意にその頭上に影が差したかと思えば、突然ガツンと鈍い衝撃が耕一を襲った。 「きゃぁあ!!?」 「がっ?!」 あまりのことにそのまま重力に従って倒れこんだ耕一。 遠くなる意識の中、何かが割れたような音と。 「いたた……え、やだっ嘘、人!!? ご、ごめんなさいごめんなさい!!!大丈夫ですか!!!?」 誰かが必死に謝る声だけがやけに耳に残っていた。
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