彼と彼女の転換点

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「えっと、多岐坂……さん? ちょっと記憶が曖昧なので、何があったのか教えてもらえるとありがたいんですけど……」 彼女が原因だということは分かったが、一体何がどうなってこうなったのか。 それを知るべく少女ーー多岐坂小紅に尋ねてみると、彼女は言いにくそうに少し俯いたあとポツリポツリと話を始めた。 「はい。お恥ずかしながら、あの時着地に失敗してしまって……」 (……着地?) 「本当は人がいないところに降りる予定だったんですけど、飛んできた鳥とぶつかりそうになって途中で落っこちちゃって……」 (鳥……?! 落っこちたって、え?) 「落ちた先に田原さんがいて、それはもうドーンと……」 (ぶつかったわけか……) いくら小柄な少女とはいえ、人一人が落ちてきたとなればあの時の衝撃にも納得がいく…………訳もなく。 「えっと……ちなみに落ちてきたって、一体どこから……」 「えっ? そりゃあ空からです。まだ飛ぶのに慣れてなくって……」 何を当たり前のことを聞いているのか、と言わんばかりの小紅の表情に耕一は頭を抱えた。 普通、人間は空を飛ばない。 少なくとも耕一の常識では。
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