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「………………」
「あ、あの大丈夫ですか? お医者さん呼びましょうか?」
「いや、大丈夫です……」
理解が追いつかず、額に手を当てて黙り込んだ耕一。
それが気分が悪いように見えたのか、小紅が慌てて声をかけてくる。
腰を浮かせた彼女を制止し、彼は横目でその表情を盗み見た。
眉尻を下げ、椅子の上で縮こまりながらこちらを伺っている彼女は、本当に自分を心配してくれているようで。
おおよそ嘘や冗談を言っているようには見えない。
飛んでいた途中に耕一の上に落ちてきた。
おそらく小紅が言っていることは本当なのだろう。
……信じがたいことだけれども。
(あーほら、あれだ。スカイダイビングとかパラグライダーとかあるしな、うん)
なんとか無理矢理に理由をあげて自分を納得させ、正答を得ようと顔を上げて小紅の方を向く。
彼女もそれに気づいたのか真剣な眼差しで耕一を見つめた。
「一つ質問なんですけど、飛んでたって一体どうやって……」
そこまで口にしたところで耕一は、目の前の少女の様子がおかしいことに気づいた。
先ほどまでの真剣な表情はどこへやら、小紅は“やってしまった”と言わんばかりの表情で口元を抑えている。
「あの……」
声をかければ彼女はビクッと肩を震わせ、取り繕うように引きつった笑顔を浮かべた。
「な、なんですか?」
「……飛んでた方法って教えてもらえないですか?」
その様子を訝しく思い、小紅と目を合わせてそう尋ねれば。
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