11人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
『あるカーシェアリング利用者、Aさんの場合』
Aさんは、根っからのスピード狂だ。
週末の晩になると、自分の車で近所の『K山』の峠道をガンガン『攻め』に行っていた。
しかし、去年、仕事中に事故を起こしたAさんは会社をクビになり失業…泣く泣く自分の車を手放してしまった。
今は、コンビニ店員の仕事で生計を立てている。
でも…
今でも、週末になると彼の『走り屋魂』がフツフツと沸いて来る。
「う~ん。運転したい」
そこで最近…
Aさんは、カーシェアリングを利用し始めた。
カーシェアリングとは会員登録して車を借りるサービスの事。
レンタカーと決定的に違う所は、24時間好きな時に車を借りれて好きな時に返せる。
そして何より、レンタカーより格安で、返す時に車を満タンにしなくても良い。
まあ、車内全面禁煙という規定はAさんにとってツライ所ではあるが、そうそう文句も言ってられない。
と、いう訳で…
今夜もAさんは、カーシェアリングで借りた車で勝手知ったる『K山』の峠道を『攻めまくって』いた。
クネクネと曲がる峠の山道をAさんは右に左にとハンドルを切りながら、ガンガンすっ飛ばす。
「イエーイ!今夜もオレの『アツイ走り』は健在だぜぇーっ!!」
アクセスを踏み込むAさん。
と!
いきなり目の前の路上に!!
小さな黒い影が!!
『ドン!!』
軽い衝撃!!
Aさんが慌てて車を停めて降りてみると…
道の上に一匹の黒猫が…
ぐったりと横たわっていた。
Aさん…
そこで、その黒猫の安否を気遣うかと、思いきや…
「…ったく!何だよ!猫かよ!」
と、何ともバチ当たりな言葉を吐き出した。
腕時計を見てみると…
深夜3時…。
「うわ、しかもウシミツ時!何か…テンション下がっちまった。まあ、借りた車が無傷で良かったけど…。あーあ、今夜はヤメヤメ!」
Aさんは、黒猫の遺体をそのまま放置したままで車に乗って走り去り『K山』を下山して、
その晩のうちに車を返してしまった。
『アノ車…
許サニャイ……。
取リ憑イテヤル……』
その次の日…
その車は、とある大病院の医院長、Bさんがシェアする事となるのだが…。
最初のコメントを投稿しよう!