【シェアする人々】

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『あるカーシェアリング利用者、Aさんの場合』 Aさんは、根っからのスピード狂だ。 週末の晩になると、自分の車で近所の『K山』の峠道をガンガン『攻め』に行っていた。 しかし、去年、仕事中に事故を起こしたAさんは会社をクビになり失業…泣く泣く自分の車を手放してしまった。 今は、コンビニ店員の仕事で生計を立てている。 でも… 今でも、週末になると彼の『走り屋魂』がフツフツと沸いて来る。 「う~ん。運転したい」 そこで最近… Aさんは、カーシェアリングを利用し始めた。 カーシェアリングとは会員登録して車を借りるサービスの事。 レンタカーと決定的に違う所は、24時間好きな時に車を借りれて好きな時に返せる。 そして何より、レンタカーより格安で、返す時に車を満タンにしなくても良い。 まあ、車内全面禁煙という規定はAさんにとってツライ所ではあるが、そうそう文句も言ってられない。 と、いう訳で… 今夜もAさんは、カーシェアリングで借りた車で勝手知ったる『K山』の峠道を『攻めまくって』いた。 クネクネと曲がる峠の山道をAさんは右に左にとハンドルを切りながら、ガンガンすっ飛ばす。 「イエーイ!今夜もオレの『アツイ走り』は健在だぜぇーっ!!」 アクセスを踏み込むAさん。 と! いきなり目の前の路上に!! 小さな黒い影が!! 『ドン!!』 軽い衝撃!! Aさんが慌てて車を停めて降りてみると… 道の上に一匹の黒猫が… ぐったりと横たわっていた。 Aさん… そこで、その黒猫の安否を気遣うかと、思いきや… 「…ったく!何だよ!猫かよ!」 と、何ともバチ当たりな言葉を吐き出した。 腕時計を見てみると… 深夜3時…。 「うわ、しかもウシミツ時!何か…テンション下がっちまった。まあ、借りた車が無傷で良かったけど…。あーあ、今夜はヤメヤメ!」 Aさんは、黒猫の遺体をそのまま放置したままで車に乗って走り去り『K山』を下山して、 その晩のうちに車を返してしまった。 『アノ車… 許サニャイ……。 取リ憑イテヤル……』 その次の日… その車は、とある大病院の医院長、Bさんがシェアする事となるのだが…。
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