夜道

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夜道

 少し遅い時間に住宅街を歩いていたら、どこかの家の玄関先で、突然明かりに照らされた。  何かと思い、身構えるが、誰かが出て来る様子はない。ただ電気が灯っただけだ。  最近多い、センサー型の電灯。便利なのはもちろんだが、突然明かりがつくため、泥棒よけの効果などもあるらしい。  種が判ればもう驚くこともなくなり、何度か似たような状態で明かりが灯っても、気にすることはなくなった。  そんな時、前に一人の歩行者がいるのが見えた。  ろくに街灯のない道を、それでも薄ぼんやりと見える影が歩いて行く。同じ方向だったから、なんとなく足をついて行くように進むと、ある家の玄関先で突如電灯が輝いた。  ここも自動なのかと思いながら、ふと首を捻る。  俺より先に、前を行く人がほぼ同じ位置を通っているのに、どうしてあの人が通りかかった時、ここの電灯はつかなかったのだろう。  単に、センサーが反応するギリギリの位置の外を通った、とかだろう。  そう考えて先を進んだが、二度程同じことがあり、そんなにうまくセンサーを避けられるものかと、疑問が募った時だった。 「わん! わんわんわんわん!」  近くの家で飼われている犬が前の人に向かって吠える。それに、前方にいる人が足を止めた。  顔は見えないが、犬の方を見たのは判る。そして、小さいが声も聞こえた。 「機械はなんとかなるのに…これだから畜生は嫌いなんだ」  つぶやきの余韻が消えるのと前にいる人の姿が消えるのは同時だった。  別に、俺の身に何か害があったという訳じゃない。ただ、自動電灯のセンサーに反応しない何かが前を歩いていて、そいつが犬には吠えられ、姿を消したというだけの話だ。  それでもこの時俺が思ったのは、今度は俺に向かって吠え始めたけれど、この、どこかの家の飼い犬を、精一杯褒めてやりたい、だった。  ありがとう、犬。おかげで、遭遇してはいけない何かと決別できたようだ。 夜道…完
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