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「で、どうして刺したの?」
簡素な部屋で、私は刑事さんに取り調べを受けた。
「だから、何度もいったじゃないですか…洋ちゃんが、私にため息ついたから…庇ってくれなかったから…だから悲しくなったんですよ…。」
「殺そうと思ったの?」
「そこまで思ってないけど、メールでそう言われたから、そうなってもいいかなーって思ったんです。」
あの時間の喫茶店はほぼ満席で、上司を刺した私はすぐに通報された。
証拠品として私の携帯も取られたので、上司とのメールの内容も刑事さんは知っているのだろう。
刑事さんは、ああそうね、と続けた。
「彼氏のほうじゃないんだ?」
「なんで私が!なんで洋ちゃんなんですか!!洋ちゃんを刺すわけないじゃないですか!私をおかしいって言ったんですよ?悪いのはあの上司です!」
興奮する私に、刑事さんはわかったわかったと言って取り調べは終わった。
何日か続いた取り調べは終わり、私は検察だかどこかでまた話しをするのだと、護送されることになった。
小さな部屋に一人でいると、最後に見た洋ちゃんを思い出す。
『洋ちゃんの……ばか!』
刺しながらそう呟く私を、悲しそうな、怖がってるような、
何も言わず驚いた顔の洋ちゃんを 思い出す。
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