第1章

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『イチの独り言』ファーストアクションまで。  落ち着くために、ピアノの部屋に行く。  窓に手を置き、彼女がいつもいる辺りを見てから、背を預け座り込む。 「はーっ、情けねぇ」  今までのことを思い出す。  なんで、こんなことになったのか。 「この曲さ、コンサートでカッコよくできるようにアレンジして」  友人でプロのピアニストからの依頼。  カッコよくってのが、圭らしい。 「さてと」  指を一本ずつ回し、手首をブラブラさせて、ウォーミングアップ。いつものルーティン。  有名なJポップ、だけど、圭のファン層がどれだけ知っているか。  思わず、口ずさんでしまうように、原曲のイメージをできるだけ生かさないと。  でも、圭がカッコよくパフォーマンスできるように。  意外と難しくないか?   自分もこの曲というか歌詞が気に入ってるから、思い入れが強くなっている。  好きな人ができたら、こんなんだろうなって。  今まで、つき合った女性にはこの歌詞のように、想い入れたことがない。  この歌詞に寄り添えるような恋愛をするなんて、いつかくるのだろうか。  スタンダードに弾いて、楽譜に記入する。
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