第1章

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 でも、いつのまにか、人が後ろにいることを察して、急に早足になったり、立ち止まって、携帯端末を出したり警戒心、丸出し。  もちろん、俺が勝手に見守ってるだけだけど。  なんでか、面白くない。  驚かせたろか。  と驚かせたら、今度は逆に驚かされた。  通りすがりに大きな声を出されて。  ぶつかった彼女の顔。  触った部分を撫でる。  え? こんなん? 顔、小さっ。  体をビクビクさせながらも理詰めでまちかさんと知り合いってこと、誘導尋問的に後輩ということも言い当てられた。  能天気な風に見せかけてからのカウンター。  とんでもない女だった。  女に対して、余裕がないのが初めてで能天気にはフランクに、時にの鋭さに敬語、自分の言葉遣いがおかしくなる。  ウチの門の前。 「ここを通ると聴こえる音楽は、あなたがプレイヤーだったんですねぇ」  そうだよ。  俺はあんたの存在をずっと前から知ってたけど、やっと、気づいたんだな。  やっと、気づいてくれた。  ピアノの奏での向こうの存在に。  話したいことがある。たくさん、溢れる。  あの曲が好きなのか。  プライベートなことも。  知りたくて。  こんなふうに出会えるなんて思っていなかったから。
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