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「うっわ、やっぱ激ウマ。いままで食ったなかで一番ヒットかも」
皿いっぱいのシフォンケーキを頬張りながら、秀人が感嘆の声をあげた。
甘いカクテルと甘いケーキ。
その組み合わせもどうかと思うけど、どっちもウマイから文句はない。
シフォンケーキに引けをとらないくらいウマイと思われるチーズケーキを食べながら、きょろきょろと辺りを見渡した。
モノトーンで統一された店内は、パソコンの画面で見るよりずっとお洒落な雰囲気だ。
もちろん客は男ばかり。
なんだかそれっぽい人もいれば、全然そうとは見えない人もいたり・・・・。
我ながら失礼だとは思いつつ、なぜだか人間観察をしてしまったりして。
ちなみに、ここは本日の二軒目。
この前にいった店は、ここよりずっと年齢層の若い人間が集まっている場所で、中央にあったダンスホールがとても華やかだった。
適当に飲んで踊って、店を出たのが三十分ほど前。
他の二人は、ダンスホールで知り合ったという若い兄ちゃんに教えてもらった店にいくといって、ほろ酔い加減で自分たちとは別の方向へ歩いていった。
「あれ、そういえばノブは?」
五分ほど前にトイレに立った伸広がまだ戻ってこない。
フォークを銜えたまま、秀人が「ああー」と呟いた。
「アイツ結構飲んでたからな。ぶっ倒れてるかも・・・・」
自分たちの倍以上飲みまくっていた伸広を思い出し、なんだか嫌な予感がしてきた。
「ちょっと俺見てくるわ」
心配になって席を立とうとすると、秀人にそれを止められる。
「あ、雅通。俺いってくる。ケーキも食い終わったしさ」
生クリームたっぷりの山盛りシフォンケーキは、もはや秀人の腹に収まったらしい。
相変わらずの甘党だ。
トイレに向かう秀人の後ろ姿を見送って、甘いカクテルを口に含んだ。
女がいないのは華がないけど、こういう場所も意外と悪くないらしい。
なんとなく顔を上げると、一人の男と眼が合った。
にこりと微笑まれて、おもわず慌てて視線を逸らした。
別の席からは、こちらを見てにやにやと笑っている男二人組み。
もしかして、ノーマルな人間ってのは、その手の人から見たらすぐわかってしまうものなのだろうか。
まあ、ゲイバーだから場違いなところにいるのはたしかだけど。
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