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なんでバレてるんだ?
「単刀直入にいうとねー」
「はあ」
「俺、ナンパしてるんだよ?」
「へ?」
ナンパ?
ナンパというと、男が女にする、アレか?
・・・・・・・・。
そうだ、ここはゲイバーで。
いわば、男と男が出会う場所で。
それで、自分も男で・・・・。
そこまで考えて、やっと理解した。
わかったと同時に、顔が赤面した。
「お、イイ反応」
うれしそうにいう男から眼を逸らして、口元を押さえ込んだ。
顔が熱い。
なんてこった。
まさか自分がこんなことになるなんて、ちっとも考えていなかった。
「おまえ鈍いのな。とゆーか、ノンケだろ?」
「・・・・ノンケ?」
なんだそれ。
落ち着かせるためにカクテルを半分ほど飲み、おもわず眉を寄せた。
男がいったとおり、爽やかな味のするカクテルは冗談抜きでうまい。
けど、残念ながらいまの自分には味わう余裕なんてなかったりして・・・・。
「ゲイじゃないだろ?ってこと。そうだろ?」
「まあ・・・・」
残念ながら男に興味を持ったことはいままで一度もない。
恋愛対象は常に女で、そんなことは考えたこともなかった。
男は「やっぱりな」と笑いながら、グラスに口をつけた。
「そうだろうとは思ったんだけど、すげー好みだったから、声かけずにはいられなかった」
「・・・・」
その言葉に、おもわず眼を瞬かせた。
自分はただの大学生で。
顔だって並だ。
この男だって、まあ、きっとゲイなんだろうけど、相手に不自由している感じはとてもじゃないけどしないし。
どうしてだろう?
そんな風に考えていることが顔に出ていたのか、男は声を出して笑った。
「好みったら好みだよ。おまえだってあるだろ?女の好み」
「まあ・・・・」
「それと一緒。あんまり深く考えるなよ」
そういわれて曖昧に頷くと、男はやっぱり愉快そうに笑った。
「なんでこんなとこきたんだ?男漁りってワケでもないんだろ?」
「ノリっていうか・・・・」
「なるほどね」
グラスを傾けて苦笑を洩らす男を見て、なんだか小さく肩を竦めた。
やはり自分たちみたいなのは場違いだったんだろう。
わかってはいたけど。
まさか自分みたいなのが声をかけられるなんて思ってなかったし・・・・。
しかも相手がこんなイイ男だなんて・・・・驚きだ。
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