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話が逸れてしまったが、この嘘臭い誕生日はその後も随分私を苦しめた。
中学生位のころのことだが、ようやく一番上の姉(この人とは親子ほども年齢差があったのだが)に、
「一月一日じゃないわ。あんた、たしか十二月の中旬頃だったのよ。学校から帰ってきたら産まれてたもん」
という話を聞いた。『えっ!?』である。
私の中では十二月三一日くらいで、それでせっかくだから一月一日にしたのかな……と自分なりに納得していた頃だ。
それにしても嫌だな、嘘の誕生日を他人に言うのは。そしてその都度、からかうような、あるいは疑うような目で『へぇ、すごい』と言われるのは。
十二月半ば?
「じゃあ、いつなん?」
「うーん、でもよく覚えとらんのよね」
その頃、この姉は高校生だったはずだ。『覚えていない』とはどういうことなのか。
未亡人だった母親が、娘二人を連れた年下の男と再婚して、そして日に日に腹が大きくなり、赤ん坊が出現する。
今から思えば、当時思春期の姉は、当然そこに至るまでの推移を知っていたはずで、その為に疎ましさもあったのではないかと思う。
『覚えとらん』は、本当は『覚えていたくもない』だったのかもしれない。
一番上の姉でも覚えとらん、という私の本当の生年月日は、今も闇の中である。
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