第1章 憧れのヘアサロン

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今日も泉のせいで匠は店長からお叱りを受けた。 営業終了後に、匠は翌日ご来店のお客様の予約をポスレジに打ち込む。 昨晩も確かに打ち込んだはずだった。 「匠、今日の予約データは?」 「昨日の夜、打ち込みました」 「入ってない」 「えっ?確かに入れたはずですが」 「入ってないんだよ!!」 画面を見ると昨晩打ち込んだはずのデータが消えている。 「そんな」 「君さ、忘れたなら忘れたって言えばいいんだよ」 「でも」 「もういい!」 「匠、ごめん、多分私だわ」 「何が」 午後のお客様が少し落ち着いた頃、突然泉が匠に話しかけてきた。 「私さ、自分のブログを書くのに画面の下にあったのを全部閉じたんだよね。 なんか保存がどうのこうのって画面に出てきたけど、ほら、私パソコン苦手じゃん。 だからそれで店長言ってたの消えたのかもしれない」 泉はレジ周りの物を触ることに禁止令が出るほど機械音痴だった。 唯一、ブログだけは持ち回りで打ち込んでおり、たまたま今朝は泉の番だったらしい。 「お前さ、なんでその場で言わないんだよ、そうしたら俺が叱られることなかったじゃん」 「え???、私怒られるのやだもん」 そんなバカなことがあり、外の空気でも吸えば若干は落ち着くかと思い匠はチラシ配りに出てきていた。 12月の夕方は、山形出身の匠にとっても流石に寒かった。 「なんで俺がこのクソ寒い中…」 ふと前を向くと100mほど先にローソンの看板が見えた。 その時、悪魔のささやきが聞こえてきた。 (コンビニのゴミ箱にチラシ捨てて、どっかでお茶でもして時間潰せばいいじゃん)
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