反逆者は楽園からの逃亡を図る

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 空から降り注ぐ太陽の光を全身に浴びる。遮るものは何一つない。芽吹いたばかりの若葉が茂る草原の行く手には岩肌が覗き、遥か彼方まで広がる群青色の大海原を望む。  両腕をいっぱい広げても入りきらない。雄大で不遜な景色。白波を静かに持ち上げ岩に叩きつける強い音に言葉を失くした。  海から吹き付ける風は強く、とても冷たい。手も耳も冷え切っていた。それでも目の前に広がる壮大なパノラマに足を止めてしまう。 「ユウ」  先を歩いていた壮介が俺のところまで戻ってくる。冷えた耳を壮介の手に挟まれた。耳たぶの冷たさに身が縮む。 「この景色、気に入った?」  俺は背の高い壮介を見上げてこくんと頷いた。壮介は満足げに微笑むと俺の手を取ってゆっくり歩き始める。 「ほんとうに誰もいないな」  大きな手を握り返して声を張った。自然の風が会話の邪魔をする。 「いいところでしょ。ユウを連れてきたかったんだ」 「でもちょっと寒い。夏ならいいのに…」 「だからいいんじゃない。誰もいなくて」  壮介は昨日からずっと笑顔だ。俺と一緒にいるときは大概笑って優しい顔をしているけれど、今は通常に特上がつくぐらい機嫌がいい。  壮介の喜びは見ているだけで伝わってくる。
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