第1章 現実

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「…まぁ、あの人友達も多いしどこかで居させてもらってるのかもしれないわね、あと何日もすれば帰って来るわ」 確かに父は穏やかな性格と財力を持っているため顔が広く、どこかの知り合いの家にいるのかもしれない。 しかし、貴族という由緒正しい身分の者がそんな勝手は許されるのだろうか。 もしかしたら、大人が作った嫌な嘘なのかもしれない。 二年間全く連絡も取れず、帰ってこない。 その先に予想出来ることはー …… 考えたくない。 継母も父を本気で捜そうとはしておらず、結局は貴族である父の財産目当てなのだろう。 だが私は不治の病によってもうすぐこの世界から離れられる。 気が楽になる。 「じゃあ、また来るわね、レノア」 「はい、お母さん」 母が部屋を出ていった。 ふぅ、とため息が出た。
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