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「俺はアバンチュール・イルの生まれなんだ。だけどこの世界の奴らは誰一人とアバンチュール・イルを信じていないみたいなんだ。頭の固い、自分の意見を信じて疑わない奴らばかりさ。でもこの島を信じてくれているレノアっていう娘がいるって聞いて、嬉しくて、ずっと探してたんだ。」
私は言葉が出なかった。
彼は、アバンチュールの住人なのか。
「レノア」
リータはまた私に手を差し伸べた。
「一緒に、冒険しないか?」
「…うん!」
行きたい。
しかし、リータの手をとろうとした時、一気に私の思考は現実にたたき落とされた。
「あ、あの…リータ、」
リータは何も疑わない優しい目をしていた。
「わ、私、病気なの…もうあと少しで死んじゃうんだ…歩くのも、精一杯だし…アバンチュール・イルで冒険はできない…」
自分でも驚くほどの震えた声だった。
「…」
リータは口を尖らせて左上を見ながらしばらく黙った後、私の手を強く握った。
「?」
「ちょっと痛いかもしれねぇけど、我慢しろよな…!」
リータは少し辛そうな顔をして私の手を握り直した。
その時私は目を見開いた。
私とリータの手の中から、少し光が漏れていたのだ。
月明かりだけの暗い夜なのに、室内で光など出るわけがない。
リータは本物のアバンチュール・イルの人なんだ。
そして、こんな不思議な力がある。アバンチュール・イルも存在するんだ。と私は確信した。
「…ふぅ」
リータはゆっくり私から手を離し、ため息をついた。
「立ってみな」
立つ事はできるが、少し力がいる。
足に力をこめて、頑張って立とうとした。
だが、その力は必要なく、スッと軽く立ち上がれたのだ。
「え?」
リータはうんうんと頷いた。
「うん、歩いてみ」
歩く事は壁を伝わないと出来ない。
しかし壁も必要なくスタスタと歩ける。
「えっ!?」
私は驚愕した。
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