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最近、管内の歓楽街で怪しい動きが相次いでいる。目をつけていた幾つかの裏組織が潰れたり、合併しているのだ。
その一方で新たな組織が台頭しつつあり、同時に夜間徘徊する若者を中心に、麻薬汚染や売春などの不法行為が広がっている。京田は現在、その実態を把握しようと動いていた。
「新興勢力……潜ってた組でも噂は聞きました。でも例の二大組織の派ではないとかで、情報がなくて」
「うさん臭いだろ」
「ええ」
「これ以上増えたら困るし、ましてや連中の間で手打ちなんかされたら、この街はよってたかって、メチャクチャにされるだろうな」
「でしょうね。そうなったら被害は拡大、エリート署長の出世にも響く」
「そうそう。行く行くは総監になりたいからね。その時は君を本庁捜一課の課長にしてあげるよ。そして僕の右腕として……」
「絶対イヤです」
間髪入れず拒絶される。京田は気を取り直すように咳払いしながら、オールバックを撫でつけた。
「……そんな訳でね、君が休んでる間に用意しとくから。詳しくは改めて遣いを出すよ。休み中はあそこにいるんだろ?」
「はあ、まあ多分」
「あの、喫茶店やってる情報屋って、君の恋人かい?」
「違います」
あっさり吐かれた否定に、京田はにっこり笑った。
「そう、なら良かった。気をつけてね。アッチの人間と警察関係がツルんでるのが大っぴらになると、マスコミとか世論とか、対外的に面倒だからさ」
「分かってます」
「で、具体的な話、今回はメインバックアップを一人付けるよ。五日後にソイツを遣いに出すから、それまで休んでて」
「誰ですか?」
イヤな予感に慎吾が眉を寄せる、それを見ながら京田は小首を傾げた。
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