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『……モット』
そう、ねだりたくなった。
貴志さんはまだ眠っている。
久しぶりに奥さんの目を盗んで来てくれたのに、1回、『一緒』になっただけ。
まだ物足りない……体の奥が熱い。
シャワーの温度は熱め。
それを「彼」は優しく私の体にあてる。
それは、掌でなぜられているような感覚を私の肌に与えて。
……洗い場の椅子の上、思わず天井に向けて溜息が漏れる。
「……ダメ。そこは、ダメ」
私がその気になってきたと思ったのだろう。
シャワーを握っていない方の「彼」の指が、私の腰の後ろから滑って、脚の間に触れようとする。
それを、私は膝を強く合わせて止め、手で押さえてイヤイヤと首を横に振った。
貴志さんがスキだと言うからずっと短いままの髪。
でも貴志さんの奥さんの髪は、とても綺麗なストレートのロングだ。
貴志さんは、自分の好みを伝えたところであいつは結局自分のスキなようにしかしないンからとぶつくさ言っていたけれど。
……本当のところはどうなのかを、私は、知らない。
私が拒んだので、「彼」は少し残念そうになる。
でも、私の茂みにまだ指は寄せたままだ。
きつく閉じた両腿のせいでそこにシャワーのお湯が貯まる。
それを遊ぶように指先で私の下腹部を優しく優しく撫でてくる。
……ン、ダメ。
脚、開いてシマイソウ。
貴志さんと初めて会ったのは、確か3年くらいまえだ。
展示会で。私はコンパニオンで、貴志さんは出品会社の担当社員さん。
一週間も一緒に同じ会場で過ごして。
毎日優しい声と、甘い言葉をかけられて。
気が付くと、展示会の終わりにはもう、ホテルに行っていた気がする。
最初の頃は、3日と開かずに一緒に過ごした。
彼が出張だと嘘をついて泊まれた夜なんて。
……翌日、派遣の仕事に行っても、まだ、彼の形が私の中に残っている気がしたくらい、何度も愛し合った。
それもでも、最近は違う。
オシゴトが忙しくなってきたとかで、逢えても、1か月に2回が良いところ。
願ってもない昇進の話があって。
今はその一番大事なところで。
……コレがもし決まったら、京都に1年間は行く事になるって。
だから私に逢っても、疲れていることが多くて。
今日も、あれほど寝ないでってオネガイしたのに、たった1回、私を自分のモノにしただけで、満足して眠ってしまった。
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