【腕】

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 私が同じ屋根の下、お風呂でコンナコトになっているなんて、知りもしないで。  そう思ったら、貴志さんの事を考えていたと「彼」が気づいたみたい。  少し意地悪に、シャワーの水流で私の胸を集中的にかすめる。 また、ため息が漏れかける。  別の手が、今度は焦れたように私の膝を掴んだ。 「……イヤ。ダメ」  慌てて身を折って、その手を止めようとするのに。 今度はまた違う手に、ギュッとお尻を掴まれる。 「イヤ……触らないで。そんな風に触っちゃイヤ」  口ではそう拒んでいるのだけれど。 頭の中ではもう、良く判らなくなっている。  きっと、委ねてしまったらとびきり気持ちの良い世界が待っている。そう思うと、体の奥が痺れたようになって、心臓がさっきから早鐘のように打ち鳴らされっぱなしだ。  熱いシャワーのせいで。 目が回りそうな気がする。  そんな私の気持ちを知ってイルように。 下腹部で遊んでいた手が、ぐいと私の脚の間に潜り込み。  一瞬力の緩んだ膝を、大きく左右に開いてしまった。  ふアッ、と、思わず、息とも声ともないものを胸の奥から吐きだして、私は小さな浴室の椅子の上、腰を反り返らせる。  ……指先が、私が今一番触れられて困るところを、優しくなぞる。  その動きが繊細だ。  私にシャワーをあてているものとは別の手が、今度は私の腕の下から忍び込んで胸をわしづかむ。  そのまま柔らかい動きで、何度も、何度も、その手が動いて。 その動きと一緒に、いつの間にか、私は甘い喘ぎ声をあげている。  アァ……ドウシヨウ。 貴志さんが向こうで眠ってイルのに。  もう、我慢できないかもしれない。 声が。  体が。 ねだってしまう。  もっともっと、キモチヨクしてッて。  私の願いならもう知っているとでもいう風に、指先たちが、私をどんどん追い立ててゆく。  イケナイ事をしてる。 それは判っている。  でも、そもそも貴志さんと私の関係からしてまず「イケナイ事」だ。 ……それに比べたら今私のしているコト、されているコトなんて。  誰にも、迷惑をかけない分、むしろ、「良い」事なのじゃないのかしら……?  あ……ッ、ンッ! 腰が思わず引きあがった。  私の鍵を探っていた指の下に。 また、別の手が、伸びる……入る。
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