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ある晩、ネネはまたチエコの咳で目を覚ました。寝返りを打って寝直そうとしたが、あまりに苦しそうなチエコの起き上がった姿を目にし、流石に心配になった。仕方なくネネも起き上がり、チエコの背中に手を置こうとして、暗闇に慣れてきた目が布団の上の飛び散った小さいシミに気づいた。
「だいじょうぶ!?」
慌てて声をかけたが、チエコは咳込んで返事ができない。ネネは隣の部屋に飛び込み、弟と寝ていた母を起こした。母は日々の仕事の疲れでぐっすり寝ていたが、ネネの声に飛び起きた。チエコの元に二人で駆け寄ると、布団には更に淡い血痰が増えていた。
夜中に飛び込んだ緊急病院で、チエコは肺水腫と診断された。
薬での治療を続けるが、その後も、チエコは夜中に喘息のような症状を繰り返した。
ネネたちは母親に引き取られたが、ネネが中学に上がった年、父がひょっこりと現れて学校帰りのチエコを連れ去った。母が警察に訴え出ようとした翌日、チエコだけが戻ってきた。
戻ってきたチエコは、どこに行ったのかを問われても、「山」、「樹の下」と答え、要領を得なかった。ネネと母は辛抱強く話を聞いた。そして、ぼんやりと次のことが分かった。
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