第1章

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「俺のブロンズウィークも終わりか……」  俺は車の中でブレーキを踏んだまま溜息をついた。  横には俺の妻が助手席で豚のようにいびきを掻きながら寝ており、その後ろに5歳になる男の子が仮面ライダーのフィギュアを握ったまま仰向けで寝ている。  この中で起きているのは俺だけだ。 「……早く帰りてえな」  俺はそう呟きながら再びブレーキを離す。今は高速道路の渋滞の真っ只中におり、じりじりと前後の車に合わせながら進んでいる所だ。  俺の休みはゴールデンウィークのように一週間もなく、サービス業のため2日しかない。ゴールドでもシルバーでもない、せいぜいブロンズくらいだ。  だがブロンズデイズでは味気がない、だからこそ俺はこの休みをブロンズウィークと名づけたのだ。  ……でも帰りたくもねえな。  俺は心の中で呟いた。車に乗っている時は家族がいても俺の時間だと思える。だが家に帰り着くと魔法は解けてしまうのだ。俺はパパにならなくてはならないし、彼女をママと思わなければならない。本当の俺を曝け出せているのはもしかすると70を越した母親だけかもしれない。  ……俺の人生はいつの間に、オートマ車になったのだろうか。
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