第1章

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 家族に対する思いは変わりないが、俺の幸せは俺自身で作っていかなくてはならない。それなのに俺はいつの間にか保守的になりドラゴンに火を噴かれないかと身構えている勇者のような存在になってしまった。  ……こいつと出会ってからだ。俺の人生が変わったのは。  横にいる彼女を見て再び過去を思い出す。  彼女と出会ったのは街コンと呼ばれる市が開催する合同コンパだ。市の中心にある駅で俺達は300人以上の中から出会い、二次会の途中を抜けて二人だけで三次会をした。ラウンドニャという総合アミューズメントパークに行ったのだ。  俺達はボーリングをしながら、タイムリミットが近いクイズのようにお互いの思いを答えあった。年収、理想の相手、子供、家事育児、親戚づきあい、祖父母の存在、介護……。  俺達は必死で条件を探りあった。街コンといっても、お互いのことは何も知ることはできない。せいぜいフィーリングが合うか合わないかだけの時間しかなかったのだ。  きっちりボーリングの二ゲームが終わる頃には俺達が考えうる条件は満たしており、俺達は次のデートの約束をした。  ……こいつで本当によかったのだろうか。
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