第1章

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 どうして俺が今、考えていることがわかったのだろう? 「あなたさ、気づいてないのかもしれないけど、いつも短い時間、ぼーっとしていることがあるのね。それで何だろう、と思ってたのだけど、独身の方がよかったのかなとか思ったりするのよ」 「いや……」  俺はそう思いながら彼女の発言を反芻していた。確かにそうなのだ、自分のリミッターを超えた時、俺はここではないどこかを想像する癖がある。今、俺がいるのはここじゃない、昔に帰りたいと思いその場を過ごしている時があった。  彼女にはばれてないように思っていたのだが。 「女は30越えたら、怖いでしょ」  彼女は不敵に笑いながらいう。確かに彼女は結婚してから性格が強くなった、逞しくなったというべきかもしれない。  俺が経験してない出産をして彼女は一回りレベルアップした。俺は代わりにレベルダウンした。  だからこそ俺は昔を思い出してしまうのかもしれない。  ここではない世界を。 「私は考えたことあるよ、洗濯して自分の分ではない下着干してる時、あなただけじゃなくてお母さんの分を干してる時、私何やってるのかなと思うの」
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