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「そ、そうだな……」
そういって俺達はまさぐりあった。キスしようとすると、太一がそれを見ていた。
「何してるの?」
「何してると思う?」
俺は咄嗟に頭を回転させた。
「お父さんがチューをねだってきたの」
「えー、エッチ」
太一はそういって顔を手で隠した。だがその隙間から俺達を監視している。
これ以上は続けられない。俺達の中でやっぱりこいつが一番なのだ。
「太一、おいで」
そういって俺は太一の手を握った。太一は嬉しそうに俺の指の感触を一本ずつ確かめる。
……そうだった。
俺は父親になった一瞬を思い出した。
こいつの手を握って握り返された時に俺の父親としての人生が始まったのだ。
……何も悪いことなんてないじゃないか。俺は今幸せだ。
この家族を守る、牙がなくたっていい。俺にはこの気持ちと体があればそれでいい。
「今日は何が食べたい?」
彼女は太一を腹に乗せ抱きしめながら尋ねると、太一は嬉しそうにハンバーグ、といった。
「そっか」
彼女は嬉しそうに答えた。
「じゃあ早く帰らないと作れないわね、あなた」
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