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「とうとう追いつめたぞ! 魔王グレゴール!」
魔王城の最深部、魔王の間へと辿り着いた勇者は叫んだ。目の前には、人間界を支配を目論む悪魔たちの支配者、魔王グレゴールがいる。魔王軍の侵略を阻止するための彼らの長い旅もいよいよ佳境を迎えようとしていたのだった。
「フフフ、よくぞここまで来たな。勇者よ」
しかし、悪魔の中の悪魔である魔王グレゴールがこれしきのことで怯むことは無い。玉座に座り頬杖をついたまま不敵な笑みを崩さない。緑色の肌に赤い瞳をした人外の化物は、嘲笑をたたえ勇者達一行を見下ろしている。
「そういっていられるのも今の内だけだ。これで貴様も終わりだ」
勇者は背負っていた伝説の剣を鞘から抜き、魔王グレゴールに向かって構える。その後ろで魔法使いエミリィは杖をきつく握り、賢者ガルフも精神の集中を始める。それぞれの表情には、最後の戦いへと臨む人間の決意と覚悟が浮かんでいる。
「フーハッハハハハッ、面白い。ちょうど退屈しておったところよ。できるものならやってもらおう」
魔王グレゴールは牙を剥き出しにして獰猛に笑った。それが戦いの合図となった。
「行くぞ!」
勇者叫び声を上げ、一気に駆け出す。そのまま玉座に座る魔王へと伝説の剣を振り下ろす。
バチーン
しかし、伝説の剣は魔王には届かない。刀身は、魔王に触れる前に見えない壁のようなものに弾かれる。
「チッ」
距離を取り直し、勇者は玉座の魔王を睨む。
「どうした、勇者よ? ワシを倒すんじゃなかったのか?」
魔王グレゴールは不敵な笑みを崩さない。
「どいて、勇者。あたしがやる」
魔法使いエミリィが前に出る。
「いでよ。炎!」
呪文を唱え杖を魔王に向かって翳す。杖が輝き、同時に先端から火球が生じる。赤々と燃え滾る火球が魔王の玉座を襲う。
バチーン
しかし、火球は魔王の黒装束すら焦がすことはできない。火球もやはり魔王グレゴールの見えない壁に激突し、四散する。
「そんな……」
自身の鍛練末に身に付けた高等魔法があっけなくかき消されるのを目の当たりにして、エミリィから思わず声が漏れる。
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