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4
男は地下を歩く。むせるような湿気と鉄や銅の腐食臭とほこりっぽさの中……
……一刻も早く、どこか休める場所にいこう。体内には何発か銃弾が残っている。打撲や裂傷は数知れず…… だが幸い骨はどこも折れていない。骨が折れていないのであれば動けるし、筋肉の痛みは我慢できる。
今日の男は強かった。
これまで倒してきた、自分と同じ<名前のない男たち>より。そして自分を始末しにきた殺し屋たちよりも……
FBIだと名乗った。
最初は汚職捜査官だと思った。ならば絶対許せないと思った。
だが、今日の様子だとそうではないようだ。
あの男が仕切っていた。
だとすれば、予想外の展開になっている。
しかし、これは吉報なのかもしれない。これで、もしかしたら<ヤツ>は尻尾をだすかもしれない。
「……マリア……」
男はそう呟くと、地下の闇の中に消えた。
「戦場だな……これは」
拓は無人となったレストランを見渡し呟いた。
天井は大きく抉られ、椅子やテーブルの大半は破壊され、ガラスは砕かれ、それらの破片と薬莢と拳銃はそこらじゅうに散乱している。
ロックたちは所持していた拳銃をこの場で放棄し、全員救急車で運ばれていった。
ユージもまた、自分が所属している市営病院に行っている。ユージは市営病院の非常勤緊急救命医で、自分の医務室を持っている。
「いやぁ~ すごかったヨ♪ ユージの闘い」
「だJO~」
そこに一部始終を観戦し、ついさっきまで自宅に戻っていたサクラとJOLJUが現れた。手には夕食のおにぎりの包みがあった。二人は暢気にも食事のために帰宅していたのだ。
「お前ら暢気だな、本当」
「拓ちんの分もあるゾ。文句言うな~」
「アリガト」
受け取り、拓もおにぎりを食べ始める。おにぎりはエダの手作りで相変わらず抜群の握り具合だ。
「エダちゃんはこのことは知らないんだよな、まだ」
「まだね」
「……今夜はエダちゃん不機嫌だなぁ……」とため息をつく拓。ユージがあれほど怪我を負えば当然エダは驚くだろう。今回このことはエダに黙っていたから、心配のあまり怒るエダの様子が拓には予想できた。そしてきっと拓も怒られる。そう思うと憂鬱だ。
「明日の朝ご飯まで不機嫌だと困るよね」と全然困った様子のないサクラ。サクラもその点共犯だが、子供だからそう激しくは怒られないと高を括っている。
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