第1章

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 とはいえ、まず拓がすべきは実況検分である。  このあと市警察の正式な科学調査班が入る。その前に簡単に確認しておきたかった。 「屋上からダクトの中を移動……天井を爆破して侵入……」  言いながら天井を見上げる。穴は直径3mほど吹っ飛んでいる。爆発自体は大きくない。 「同時に発煙筒を投下……9ミリのSMG、2丁を乱射……」  拓は現場に落ちているオープンボルトのSMGを発見した。マイクロ・ウージーとマックM10だ。どちらも予備マガジンをガムテープでつなげていた。そして、二丁ともユージの12ゲージ・スラッグ弾で撃ち抜かれ故障していた。その跡がしっかりと残っている。  そして、部屋の奥の45オートを手に取った。これは狂犬が持っていたものだ。 「誰だよ…… <狂犬>は狂った知能をもたないモンスターだって? しっかり襲撃の知識あるじゃないか」  2丁のSMGを間断なく、かつ的確に2マガジン分使いこなしている。天井の爆破、発煙筒で視界を奪い、不意をついてSMGで掃討する…… フルオートもトリガーを引きっぱなしではなく、ちゃんと弾幕を指で制御しながら撃っている。軍隊や特殊部隊の急襲方法だ。SMGも爆薬もそうそうNYでは手に入らないものばかりで、素人じゃない。 「お前らの感想は?」 「ん? プロっぽかったよー」 「ユージが不意つかれたくらいだJO」 「そこなんだよな。やる気のないサクラが気づかなかったのはともかく……」 「にゃんだとぉー」  拓はサクラを無視し、おにぎりの残りを口に放り込み咀嚼しながら大きく開いた天井のところに戻った。  飲食店の天井裏だけあって排気ダクトや色々なパイプが走っていて空間自体は広い。 「寸前まであのユージが気づかないなんてあるのかね?」 天井自体は板だが、骨組みの柱はしっかりしている。おそらくこの柱の上にいたのだろう。そしてこれも推測だが、例の防弾コートをすっぽり被っていたのではないだろうか? 狂犬は、本人の体重と装備を考えれば180キロ~200キロはあっただろう。天井の板はその重さは耐えられそうになく、骨組みの柱がギリギリというカンジだ。とすれば、自分が乗っている柱を落とすだけの爆発量でいい。それなら少量の爆発物で天井は落とすことが出来る。 「裏がある。下っ端とは思えん」と三人の背後で声がした。 「にゃ?」
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