第1章

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 その声に三人が振り向くと、そこにはいつものスーツに着替えたユージが立っていた。 「おー ユージ復活だJO」 「相変わらず不死身だねぇ~」  暢気なサクラとJOLJUは笑い、拓は不安げな表情を浮かべた。 「お前大丈夫なの?」  ユージは歩きながら両手を見せた。両手とも包帯が巻かれている。 「右は擦り傷と裂傷2針。左は打撲に小指と中指にヒビだ。たいしたことはないが」  垂れた前髪でよくは分からないが、見れば左の額にはしっかり4針縫っている。そんな怪我をした手で、自分自身をよく縫えたものだ、と感心していいやら呆れていいやら。 「ヘンなとこ折ったね」とJOLJUがいう。そんなところやられていたか? 「あの筋肉の塊殴って、こっちの指にヒビが入るんだ。プロテクターつけていたのにな」  人体は意外に硬い。喧嘩で素人はよく攻撃者側の拳の皮が剥けたり、指や手首の骨を折ったりする。もちろんユージはそんな素人ではなくちゃんと拳を守る殴り方で殴っていたし、手に優しい掌打も使っていた。それでもこの様だ。 「お前、動いていいのか?」 「動けないほどのダメージじゃない」  いや、本当は入院すべき怪我である。もっとも、もっとひどい怪我で動いていた事もあるし、自分の事件だ、この男は這ってでもここに来ただろう。 「じゃあ、ユージにダーイブしてハグしていい♪?」けたけたと笑顔のサクラ。 「コロスぞ」と本気で睨むユージ。 「で? 他にダメージは?」 「左、一の腕ヒビ。肋骨1箇所ヒビ。頭部4針…… 右足裂傷5針、膝下裂傷3針。右二の腕裂傷6針。背中、胸に肩が大方大部分で打撲して炎症…… 今夜は熱が出るな」  裂傷は、狂犬の拳が当たり裂け、膝下はユージの膝蹴りで自分の膝のほうが衝撃で裂けたのだ。驚くべき事にユージのケガの半分は攻撃したことで負ったものだ。その事実だけ見ても相手が尋常な相手でなかったということだ。 「ちょ……本当に大丈夫ユージ? 家に帰って寝てた方がいいんじゃ……」と、少し真面目に心配したサクラだが、ユージが一人で帰宅する訳ないことに気づく。 「あ、エダが怖いのね……ユージ」 「煩い。……痛みには慣れている。痛み止めと解熱剤は飲んできたし、骨のヒビ程度は三日ほど腫れるだけですぐにくっつく。薬とテーピングをしっかりしていれば問題ない」
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