第1章

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 他人事のように淡々と言っているが、すでに注射は、痛み止め2本、抗炎症薬2本、破傷風予防を打ち、38度の熱があるのだ。それでも表面的にはピンピンとしているのだから、拓もサクラも開いた口が塞がらない。 「しかしユージは、合計18針分、傷が増えたのであった…… これまでの傷合わせて通算何針なのか、楽しみだJO♪」と、ふむふむ頷くJOLJUと、同意して頷くサクラ。ユージは全身に目立つ傷が50近くある。だからリゾート地のプールには入れないし、傷を隠すという理由でワイシャツではなくタートルネットクを着用している。 「黙れ」  ユージは三人を無視して、もっとも派手に格闘していたあたりまで歩いた。  ところどころ血の跡やちぎれた鎖がある。 「この血はヤツのだ。ヤツは常に出血していた」 「この点々と飛び散っているのが、か?」 「俺の12ゲージ・スラッグが防弾着を貫いて、ヤツの筋肉を抉ったんだと思う。この血はその血だ。俺は額の擦過傷からの出血が目立つくらいで、後の怪我は服に吸収されていたからあまり飛び散っていないと思う」 「えー! ユージがショットガン使ったの最初じゃん。ショットガンが貫いていたンならなんであんなに動けんの? あの化物わ」 「ヤツの筋肉で止まって内臓までは達していなかったんだよ。視界が悪くて真ん中に撃ち込んだ。おそらく胸と腹筋だ。普通なら防弾で防いでも衝撃で肋骨は折れるんだがそんな様子もなかった。あの筋力だとその衝撃も防いだんだろう」 「聞けば聞くほど化物だな。お前…… ホントよく生きているね」  昔からの付き合いながら拓はその点不思議でならない。ユージは痩せ型ガッチリマッチョだが、人間領域内だ。話にきく化物相手にユージがこの程度のダメージで生き残ったのか毎度ながら不思議である。 「一応DNAは確実に採れるからデーター検索してもらうが、そのくらいのことはフランス警察やマフィアどもも調べただろう」  血も指紋も大量に残していっているが、そもそもデーターがないならば照会しても「対象なし」で終わる。 「SMGと爆薬の成分もだよ」  拓が天井を指す。45オートはともかく、SMGと爆薬だけは海外からは持ち込めない。米国で入手しているはずだ。しかもマフィア関係者以外からだから、かなり絞り込めるはずだ。
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