第1章

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 もっとも、よほど特殊な軍用爆薬でないかぎり爆薬も裏社会で簡単に手に入るので気休めにしかならないが。 「……爆破突入…… そしてレザーの特殊防弾着、か」  ユージは天井を見つめた。 「どうした?」 「いや。なんか記憶にひっかかるんだよな…… デジャブってやつかな?」 「天井爆破して突入するのは俺たちの訓練でもやっているじゃないか」  二人ともNY支部のHRT隊員で対テロ訓練も受けている。天井から突入というのは基本の手の一つだ。  いや……違う。  ユージのデジャブはそういうのではないのだ。  おぼろげだが……ユージは思い当たった。 「俺……これで二度目か? このタイプの襲撃」 「ん? そんなことあったっけ?」 「昔だ。俺が潜入捜査官辞めた直後…… マフィアたちと大戦争していたときだ。ああ、軍隊の特殊強襲みたいなのがあったよ」 「あったっかな?」  拓の記憶にもない。当時はほぼ毎日のようにユージは銃撃戦を繰り広げ、マフィアやチンピラ、殺し屋を返り討ちにしていた頃で、その頃は拓もFBIに入所したばかりの頃だ。 「なんじゃい。二人とも襲われたのに記憶にないんかい」 と呆れるサクラ。だがそれも当時のことを思えば仕方ないだろう。ユージの周りはまさに戦場だった。元々FBIの作戦が、ユージを囮にしてそのテのあぶれモノを根絶やしにすることで、その時襲ってきた大半はユージによって射殺。数はユージすら覚えていない。頻度でいえば一週間で平均3度は襲撃を受け、毎回無傷で撃退し、そして毎週十人以上の殺し屋を殺すか逮捕してきた。基本的に襲撃は街中堂々とか、奇襲か、爆弾によるものか、狙撃か……だった。在宅中襲ってくることも多かったが、その中で一度だけ、非常に特徴的な、軍特殊部隊の奇襲作戦を思わせる襲撃があったように思える。  徐々に思い出してきた。  あれは深夜……天井、窓、ドアの三箇所から爆破突入し、ユージは担当の護衛捜査官と対処したが、リーダーと思われる襲撃者に護衛捜査官は倒され、ユージはその男と戦い、激しい銃撃戦の後、最終的にはナイフでの攻防があり、最後は素手で殺した。  確か、あの男もレザージャケット・タイプの防弾着を着ていた。普通のミリタリー・タイプの防弾着を着て襲ってきた殺し屋は多くいたが、レザージャケット・タイプというのは珍しい。 「もしかして……」
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