2ー4. 特別

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. 素直のテストが終わるまでに、カレーの作り方を確認したり、特別だと言うことを証明する方法を考えたり、やることがいろいろある。テスト三日前の今日は、いつもの電話も短めだった。頑張ってるんだなと思った。俺はというと、久川の小説の続きが読みたくて、何巻まで出ているんだろうと検索をかけたりした。7巻まで出ているらしかった。俺の手元にある献本は3巻までだ。つまり、久川は3巻まで俺に送ってくれて、そして何の反応も寄越さない俺を見限ったのだ――というとあまりにも情けない感じがする。さすがに続きを送ってくれというほどの厚かましさはない。ネットで残りを注文した。本を購入するのは久々のことだった。読むと描きたくなるが、描きたくなっても描けないのもわかりきっている。 ため息をついた。 「どうしたの?」 母親に問いかけられて、実家にいることを思い出した。また自分の頭の中に夢中になっていた。 「指でも切った?」 すぐ隣に立って玉ねぎを刻んでいた母親は、人参の皮をむいていた俺の手元を覗き込んだ。 「切ってない切ってない」 「じゃあ、なんのため息?」 母親は再びたまねぎを刻み始める。俺もピーラーを使いながら、なんでもない、と適当に誤魔化した。
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