3章:テストの結果

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.  翌日出勤して事務所に入ると、既に宮沢さんが席に着いていた。あの件以降、俺よりも早く来ていることがある。 「おはようございます」 「おはようございます。今日も、榊君きますかねえ」 「どうでしょうね」  本当に見当もつかなかったからそう答えた。椅子に置いたカバンからタオルを出して、駐車場からここまで来るのに濡れてしまった頭をかるく拭く。それを見ていた宮沢さんがため息まじりに、 「雨、嫌ですよねえ」 とつぶやいた。 「本当に」  いつ梅雨は明けるのだろうか。 「榊君のことですけど、昨日のうちに高校へ連絡していますからね」 「えっ」 宮沢さんはにっこりする。 「担任の先生、いい人そうでしたよ。無理やり連れ戻したりしないけど、休みすぎて退学にならないように急いで問題を解決するって。もし今日榊君がきても、学校に知らせてるって話はしないでおいてくださいね。居づらいと思われて変なとこに行っちゃったら困りますしね」  随分と手回しがいい。俺はぼんやりしていた自分が恥ずかしくなる。 「すみません、本当は俺が連絡するべきでした」 「気にしないでくださいよ。榊君の親御さんには先生が説明するそうです。だから、秋野さんはいつも通りにしていてください」  就業時間に爪を塗り、電話をかけ、仕事をこちらに押し付けていたあの宮沢さんが……。驚きが顔に出たのか、宮沢さんは口を尖らせた。 「私だっていろいろと考えているんですから」 「ありがとうございます……助かります」 「はーい。じゃあ今日も受付お願いします」  宮沢さんは照れ隠しのような返事をして、自分の爪を眺め始めた。今日もつややかな爪だ。オレンジ色にぴかぴか光っている。俺ははーいと返事をして、受付に向かった。  玄関横の受付にたどり着くと、ちょうどガラス戸が開いて、透明な合羽を着た榊君が現れた。榊君は俺に向かってぺこりと頭を下げる。 「おはようございます」 「おはようございます。濡れなかった?」 「大丈夫です、今日は合羽を着てきたので」  榊君はぎこちなく微笑みながら合羽を脱ぎ、それをゆっくりと畳んだ。確かに、髪の毛以外はあまり濡れていないようだった。
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