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バタフライエフェクト
あれは僕がまだ小学五年生、夏休みに父親の生家、長野のおじいちゃんの家に遊びに行った時の事だ。
車で6時間以上かかる、その場所は黒部峡谷から程近い山奥にある集落、その小学校の生徒の数は、全体で16人しかいないそうだ、逆に言うと大自然しかない場所、でも僕は、そんなおじいちゃん家に、毎年夏休みになると、帰省するのが楽しみで待ち遠しく思ったものだ。
おじいちゃんは地元の小学校の教頭先生をやっていた事もあり、森の小動物や昆虫にとても詳しくて、勿論、とても優しかったので、僕は大好きだった。
その日も、朝から暑かった。
田舎は東京とは違って涼しそう、と言ったりもするけれど、やっぱり夏は暑い、夜も朝も。
早起きした僕は、朝ご飯の前に虫採りに出掛けた、夏休みの自由研究に昆虫の標本を作るつもりだったので、珍しい虫が欲しかったのだが、その時は採れなかった。
朝食の時間に渋々帰宅すると、おじいちゃんが出迎えてくれた。
「マー君お帰り、珍しい昆虫は採れたかい」
「ただいま、おじいちゃん、ダメだったよ、でも見たこと無い綺麗な蝶々がいたんだ、青色の」
それを聞いたおじいちゃんは右手を顎に持っていき、少し考えてから興味深そうにぼくに訊いてきた。
「ほう、青い綺麗な蝶々????羽に黒とオレンジの点々が無かったかな?」
「あ、あったよ、大きさはコレくらい」
僕は親指と人差し指で円を作って見せた。
「マー君、そりゃ、もしかしたら、オオルリシジミ、かもしれんな」
「オオルリシジミ?」
「ああ、今は全く見なくなったが、じいちゃんの子供の頃は、結構いたもんだが」
あ、あれは結構珍しい昆虫だったんだ、僕は取り逃がしたその蝶々を、たまらなく惜しんだ。
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