6人が本棚に入れています
本棚に追加
「え、これって、まさか....」
父さんはそれを見上げたまんま、応えた。
「ああ、オオルリシジミだ」
そこには、夕焼けを全身に受けて、煌びやかに羽ばたく、オオルリシジミが、信じられ無い数の群れをなして、夕日に向かって飛んでいた、いったい何十匹、いや何百匹いるのだろう、僕は夢でも見ているのかと、目を疑った。
おびただしい数の蝶の群れは、陽の光の朱と青色の羽が合わさり紫色に輝いていた、その紫煙のようなカーテンが時折、夕日を優しく遮ると、幻想的なベールの魅惑に心奪われた。
「絶滅したんじゃ無かったんだ」
僕と父さんは呆然と立ちすくみ、その命の輝きに目を奪われていた。
「父さんもそう聞いていたが、生き延びていたんだな、こんなのは初めて見た」
「凄いね」
「ああ、凄いな」
蝶々の群れは一条の帯となり、山間に落ちる夕日と共に、儚くも消えていった。
その後も、二人は暫く動けなかった。
夢じゃない、何度も自問した、どんな理由があるのだろうか、どのくらい偶然が重なったら、それを奇跡と言えるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!