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次の日、僕は今日の夜行バスで帰るから、夕方までは片付けを手伝うつもりだった。
遅めの昼飯を済ませると父さんが言った。
「雅人、もうこっちの事はいいから、夕方までゆっくりしていろ、明日仕事なんだろ」
「ありがとう、そうするよ」
ゆっくりと言っても、こんな山奥では、する事は限られている、魚釣りに昆虫採集?ふふふ、僕は、今度いつ訪れる事が出来か分からない、おじいちゃんのいた家とこの景色を目に焼き付けておこうと、散歩に出掛けた。
東京じゃゴールデンウィークのこの時期、初夏の陽気で半袖姿も見かける程だが、ここは標高のせいか、朝晩は冷え込む、まだ道の端には雪が解けずに残っている所もある。
でも日中はポカポカ陽気だ、新緑が美しく輝き、目を癒してくれる、新芽の息吹が芳ると、なんとも心が落ち着いた。
「やっぱり好きだな」
今度は両親に会いに行くと言う口実が出来たのに、いつまでこの場所があるのやら。
「ダム建設ねえ、もったいないな」
出来るだけ永く住んで貰いたいと願った。
ふと、木々の隙間から、あの崖が目に入って少し驚いた、いつの間にか僕は、おじいちゃんの亡くなった場所の側まで来ていた、戻る事も出来たが、折角来たんだ、お祈りくらいは捧げる事にした。
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