第1章

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 ぬめっとして、ぬぼっとして、にょろっとして、ついでに白っぽい。人間のうわさする『疫病神』ってぇのにまだ会ったこたぁねぇが、おおかた、そんな姿をしてるにちげぇねぇ。 「大っきいの」  かりん、かりんとなる鈴の音の合間に、マヌケな声する。ふり返ってみりゃ、爺さんに首根っこをつかまれた穴子の奴がそこにいた。どうしてそうなった。 「捕まった」  見りゃわかる。  エラを抑えられて苦しいのか、やたら口を動かす穴子。でも、声は相変わらず間延びして情けない。びったぁん。びったぁん。せめてもの抵抗に、尾を爺さんの手首にぶつけてい……あ、6回であきらめやがった。  爺さんの方も穴子の抵抗を気にした様子はなく、ただにっこにこしている。  もう何を言ったものか。思案する俺っちに、穴子の奴はまた声をかけてくる。 「たすけて、大っきいの」  ホント、どうしてこうなった。
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