今日も侯爵令息は幼なじみの伯爵令嬢の所へ愚痴を言いに行く

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「それで、今回は何を言ったんですか?」 律儀なルチルは、忘れず手土産を持って来たジェードに先を促す。 それでようやくジェードは、今回の目的である8回目のお見合いの愚痴を話す機会を与えられたのだ。 爽やかな風が吹き抜けていく柔らかな光が射す庭園で、ジェードは目を細めながら、手土産のスイーツを頬張り、自分の話に耳を傾ける可愛い幼なじみをそっと見つめた。 「いいですか? 女心という物は不合理の塊なんです。それを合理的でないと、あっさり切り捨てるから駄目なんですよ」 「なるほど。次からは善処しよう」 「是非そうして下さい」 ジェードの手土産のスイーツを平らげ、紅茶を飲み干したルチルが満足げに笑う。 それを見て、ジェードが席を立った。 「そろそろ失礼するか。次の見合いの対策も練らないといけないしな」 「それじゃあ、次はノワールの1日限定20個のチーズタルトでお願いします」 「げっ! 開店30分で売り切れ必至の人気スイーツじゃないか。……って、おい。何で振られること前提なんだ?」 「もし上手くいったら、1時間でも、半日でも、何なら1日中だって自慢話を聞いてあげますから。勿論、手ぶらで構いませんよ」 「その言葉、忘れるなよ」 意気揚々と帰って行ったジェードが、ノワールの1日限定20個のチーズタルトを携えて伯爵家の門をくぐったのは、それから僅か5日後の事であった。 (完)
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