2章:俺が知ってるダンジョンじゃない

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引き戸を諦めて反対側にある押入れに向かう。こちらはすんなりと開いた。 中は何もなかった。上下を分ける様に真ん中に板がある以外は本当に何もない。埃でさえも。 押入れの天井を押したが動くことはない。天井裏はない様だ。ネズミの心配はしなくて済みそうだ。 次は窓に目標を移す。光が入ってきていると言う事は外に繋がっているかもしれない。 そう希望をもって窓を開けようとするが開かない。窓から外を伺うがすぐそこに白い壁がある様に何も見えない。 コレは完全に密室か。 どうする事も出来ないと分かると逆に落ち着いてきた。逃げられないのなら今できる事を精一杯しようじゃないか。 ここにきてやっと今まで無視をしてきたものに目を向ける。ちゃぶ台に載った2つの物体。 1つは見慣れたものだけど、欲しくていくら親に頼んでも買ってもらえなかった、タブレット。 もう1つは、ちゃぶ台に載っていると言うよりも、ちゃぶ台の上で浮遊していると言っても良いもの。 三角形が上下に4つずつついている、所謂八面体のクリスタルだ。 黒色かと思ったが、手に取って窓の傍で光に翳すと濃い赤色に変わった。 格好良い言い方をすれば、コレは『ワインレッド』と言える。それでも言い表せ切れていないが誤解は少ないだろう。
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