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エミルが住む汚いアパートの一室。
その部屋の使われた様子のない暖炉のレンガの裏からその書類は出てきた。
何の変哲もない茶色い封筒は、クシャクシャになって形を変えている。
それが――。
「……」
俺が固唾を飲んで手を伸ばせば、エミルは簡単に俺の手の上に封筒を乗せてくれた。
俺はホッと息をつく。
エミルはやっぱり『バカな女』だ。
これでもう、俺のお役目も終わり。
「――もう、いいですよ」
合図を送れば、部屋のドアが開き、銃を手にした男がひとり、踏み込んで来る。
その男をひと目見て、エミルは叫んだ。
「クレメンス!」
そこに現れたのは、俺が殺したはずの男、クレメンス当人だ。
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