なくしてしまった大切なもの

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「やあ元婚約者どの、久しぶりの再会だね」 俺と立ち位置を変わって、クレメンスが前にでる。 その手には、エミルを狙ったままの拳銃が握られている。 もう一方の手が俺に差し出されたので、俺はうやうやしくクレメンスの手のひらに書類を乗せた。 「……厄介な女だ」 クレメンスは出来るだけにこやかな表情を浮かべようとしているが、上手くいかなくて頬がピクピクと動いている。 「いつまでも私に面倒ばかりかける。まったくもって忌々しい」 クレメンスはたいがいにクズだ。 何のチカラもないエミルがちょっと調べただけで、いくつものボロが出てくる最低の男。 それでも、俺をチラリと見て、 「最後まで、キミに仕事を任せてもいいかね」 金払いは最高にいい。 「任せてくださいクレメンスさん。銃声は人を呼び寄せる。女のひとりぐらい、くびり殺してみせますよ」 俺は指をポキポキと鳴らす。 殺し屋の俺は、これまでに何度も同じことを行ってきた。 今さらな感じもする、殺人。
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