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「パパ?どうしたの?」
朝早く家を出ようとする彼に声をかけた息子の姿が、鮮明に思い出される。息子はパジャマ姿で、彼に似た色素の薄い髪の毛はあちこち好き勝手に跳ね回っていた。
「俺は、出かけてくる。」
「どこに行くの?」
「魔女のところだ。」
「まじょ?」
「ああ、くそ魔女野郎に俺の「偽り」を返してもらわないと。・・・・・・――あぁくそっ!」
どうしてだ?何の嘘も偽りもできない自分に苛立ちが増す。息子は彼が何を言っているのかいまいち理解できないようだった。
「パパ、行ってらっしゃい。」
息子はいつものように挨拶のキスを求めて手を伸ばした。
彼は息子にキスができなかった。
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