第1章

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 グレーの立方体を出ると空は群青色に変わっていた。 「はい、餞別。」  後ろから見送りに出ていた魔女は、先ほど描いた絵のページを破って彼に渡した。 「君は魔女に呪われた。魔女に呪われた君はスパイとしての活動を何も覚えていない。よって密かに引き継ぎが終わった後、君は一般人に戻るわ。」  殺されなくてよかったね、と魔女は笑った。月の光か、魔女の顔は青白く見えた。 「お前は本当に魔女なのか。」  彼は静かに尋ねた。 「魔女よ。」 「・・・俺はそんな者は信じない。」 「でも魔女よ。」  魔女は残念そうに言う。 「何故俺は、完璧になれなかった。」 「君は完璧なスパイになりたかったの?」 「そうだ。」 「だとしたら、君にははじめから無理だったのよ。」  白い砂の上で魔女はくるくると踊った。 「君は『愛情』を無くしていたもの。君は完璧になれっこないわ。」  砂がぽくぽくと音を立てる。ふと、彼は海を見やった。 「おうちにおかえりなさい、坊や。完璧になれると良いわね。」  魔女の声が背後から聞こえた。  振り向くと、立方体の城ごと、魔女の姿は消えて無くなっていた。
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