第1章

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あの彼がわたしの手紙を持って目の前にいる。わたしが死ぬ前に怒りに来たのかな。わたしって本当に嫌われてるんだ。 「病院の女の子を助けたのは君なんだろ?花屋にいた赤ちゃんを助けたのも君なんだろ?俺の彼女にも身代わりになろうとして来てくれたんだよな?身代わりになろうとしてくれたんだよな!?」 A子は頷いた。A子は謝りたかったけれど、声が出なかった。 「人殺しなんて言って悪かった!許してくれ!君は人殺しなんかじゃない!もうひとりで背負い込まなくてもいいんだ!もう無茶しなくていいんだよ!」 彼は傘を放してA子を抱きしめた。 雨がA子の顔に降る。 雨の日は泣いてもいい日。 A子は声にならない声を上げて泣いた。最期の命の灯火を燃え上がらせるように激しく泣いた。彼に抱かれて泣きじゃくった。そして息がうまくできなくなって――、A子は短い人生の幕を閉じた。
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