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ふと、携帯に通知を知らせる音が響き凛太は我にかえった。
時が経つのは早いもので、気づけば日が傾むく下校頃となっている。
視線を落とすとそこには、「友」からのメッセージがあった。
『ねぇ、ちょっといいかな』
『なにかあった?』
「友」からメッセージがくるのは珍しく、慣れた手つきで返信を打ち込んだ。
『もうすぐハタチだね。そしたら結婚できるんだよ?』
『そうだな。やっと、隠し通す日々も終わりだな』
『約束、何があっても守ってくれるんだよね』
『当たり前だろ』
ぶっきらぼうだが、画面を打ち込んだ奥では綻ぶ凛太の顔が映った。だが、今日は別段特別な日でもないのにこの話になった理由がわからないという疑問も孕んでいた。
「友」、友奈(ゆうな)とは二年前から付き合っている幼なじみだ。だがもちろん、許されない背徳の恋である。
そして、晴れて交際が認められるハタチに結婚しようとも約束している。
『よかった』
『どうした?』
やけに友奈の言動がおかしいので、再度問いかける。
だが、その返信はいくら待っても来ることはなかった。
「……?」
おかしいな、いつもならすぐ帰ってくるのに。
凛太は首をかしげた。
ーまぁ、なにかあったのだろう。例えば、ハタチに向けて多くなる生殖権についての勉強で不安になったとかだろうか…
それならば考えても仕方ない。今の時期にはよくあることだからと深く考えないことにした。
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