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「ただいま」
するとこそこには、オロオロと困惑する母の姿があった。
「あ、ちょうどよかった。凛太、友奈ちゃんのことで何か知ってる?」
玄関先で出くわした母により、一度シフトした思考が引き戻された。
「2日前から行方不明らしいんだって……まぁ、もう接点もない凛太も知らないよね」
「……あ、あぁ」
2日前、という単語に凛太は眉をひそめた。ついさっきまで話していたし、自分に何も言ってくれないのは何故なのだろうか。
家出、誘拐、遭難。いろんな可能性を考えるが、答えなどでずに空回る。
そんな時、図ったかのように友奈からのメールが届く。
携帯を落としそうになりながらも『それ』を確認した。
『さよなら。私たちの始まりの場所で』
その瞬間、鈍器で殴られたかのような錯覚を感じた。
思考が停止し、目の焦点が定まらない。
だが、気付いた時には馬のように駆けていた。
「なんで……なんで!」
母親の制止する声も振り切って、《始まりの場所》へと走る。
だが凛太には、全く心当たりがなかった。なぜ、あのようなメッセージが送られてきたのだろうか。
私たちの始まりの場所、それはすなわち付き合った場所ということだ。
今でもしっかり覚えている。今の世代、付き合うということは共犯者になろうという事と同じだ。
そんな驚愕の告白、それはこの橋の上で行われた。
「はぁ、はぁ…………友奈っ!!」
「……」
いた。
ただ一つ、告白の夕暮れと違った事は
「やめろよ……そんなバカな事。死んで……どうする!」
ーー友奈のいる場所が、橋の手すりの外側だったという事だ。
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