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「待ってたよ……凛太」 友奈は哀しみをたたえた瞳で、凛太を見つめた。 「……説明、しろよ」 語気を荒げて友奈を睨んだ。だが友奈は気にする様子もなく、淡々と言葉を紡ぐ。 「『人類は、一番の間違いを犯した。人一人の命よりも大切なもの、血を繋ぐ力を国家規模で手に入れてしまったからだ』」 友奈は、取り憑かれたようにセリフを吐く。 「『人類は人類である前に、生物としての尊厳を忘れてしまったのだろうか。まるで、自分たちは生物を超えた存在だと主張したいのだろうか』」 このフレーズは、聞き覚えがあった。 「『そんな事をすれば、人の個性は死に絶える。生殖力を奪う事は、一番してはならないことだ。私はこの出来事を、何世紀過ぎようが伝えてみせる。人間の、最も人間らしくない愚行をーーセリム・リベロ』」 セリム・リベロ博士。 生殖権導入について、最後まで反対した学者だ。それゆえ、導入後に生殖権を剥奪され、彼は今際の時にこう言い残し亡くなった。 生殖権反対の第一人者として、デモ行為の際にはセリム博士の言葉が使われる場合がほとんどである。 だが、そんな言葉をなぜ友奈が使ったのだろうか。 「私ね、セリム博士は最初淘汰された負け犬の遠吠え程度にしか思ってなかったの」 「……」 そしてゆっくりと、友奈は虚空を見据えた。 「でも、今ならわかる」 はっきりと、明瞭に紡がれた言葉には覚悟を孕んでいた。 「私たちも、そうだから」
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